福岡高等裁判所宮崎支部 昭和36年(ネ)169号 判決 1966年3月08日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
原判決主文第一項を次のとおり更正する。
被告(反訴原告)は原告(反訴被告)に対し鹿児島市武町五一七番地、宅地七五坪の換地予定地同所同番一三ブロック宅地五二坪八合のうち三三坪六合(別紙第一図面中A、B、C、D、Aの各点を順次結ぶ線で囲んだ斜線部分)を同地上にある木造瓦葺二階建店舗一棟、建坪一五坪(実測一六坪一合外オロシ九坪七合五勺)二階一三坪七合五勺を収去して明渡せ。
事実
第一、申立
控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。被控訴人(反訴被告)は控訴人(反訴原告)に対し鹿児島市武町五一七番地宅地七五坪の換地予定地同所同番一三ブロック宅地五二坪八合のうち三三坪六合(西鹿児島駅前大通に面し控訴人(反訴原告)所有家屋の敷地を含む部分)につき、昭和二六年一一月二日付売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人(反訴被告)の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
第二、当事者双方の事実上及び法律上の陳述並びに証拠関係は、次のとおり附加訂正するほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。(たゞし、原判決七枚目表六行目、九枚目裏七行目、一〇枚目表一行目に「二一坪」とあるのを「二二坪一〇」と改め原判決五枚目表一〇行目、七枚目裏一二行目、八枚目裏一〇行目及び一二行目に「静江」とあるのを「静恵」と改める。)
控訴代理人の陳述
(一) 瀬尾静恵が本件換地予定宅地中北側一〇坪に家屋を建築したことについて被控訴人との間に紛争を生じ、被控訴人は右瀬尾を相手方として家屋収去土地明渡請求訴訟事件を提起したところ(鹿児島地裁昭和二五年(ワ)第三四九号事件)、瀬尾は仮定抗弁として控訴人占有にかかる本件宅地部分二二坪一〇を含めて二五坪につき借地権を有することを主張した。被控訴人主張の本件和解が右訴提起の翌年である昭和二六年一一月二日成立したにも拘らず、かかる紛争のあることを秘して被控訴人は控訴人との間に和解(売買契約)を成立させたのである。被控訴人と瀬尾間の訴訟において瀬尾が勝訴すれば、控訴人の本件宅地部分の占有は根底から覆えることになる。そこで控訴人は右訴訟が解決するまで本件和解にもとづく代金支払を拒み(民法第五七六条、第五七〇条)、同事件は昭和三三年七月一四日瀬尾の敗訴に一審判決の確定をみたので、同年一二月一五日代金全額三〇万円を供託したのである。これによつて控訴人は右和解条項にもとづき本件宅地部分の所有権を取得した。
(二) 別紙第一図面中A、B、C、D、Aの各点を順次結ぶ線で囲まれる斜線地域を控訴人が現に占有していること並びに同地上の控訴人所有家屋が被控訴人主張後記(三)のとおりであることは認める。
(三) 控訴人は当初右地域中別紙第二図面表示のA、B、F、E、Aの各点を順次結ぶ線で囲まれる地域(二二坪一〇)を被控訴人から賃借したのである。
被控訴代理人の陳述
(一) 控訴人の右主張事実(一)中、被控訴人と瀬尾静恵間の訴訟が係属し、控訴人主張の頃瀬尾敗訴の一審判決の確定により終局したことは認めるが、その余の点を否認する。
(二) 控訴人主張の(三)の点を否認する。
(三) 本件換地予定地のうち控訴人が現に占有する部分は別紙第一図面中A、B、C、D、Aの各点を順次結ぶ線で囲んだ斜線地域であり、同地上の控訴人所有家屋の表示は正確には主文第三項掲記のとおりであるのでそのように訂正する。
立証(省略)
理由
一、当裁判所もまた被控訴人が主文第三項掲記の宅地部分三三坪六合の所有権にもとづき、控訴人に対し主文第三項掲記の家屋を収去し右土地の明渡を求める本訴請求は正当であるから認容すべきであるが、控訴人が右土地の所有権移転登記手続を求める反訴請求は失当であつて棄却すべきものとする。その理由の詳細は次の点を附加するほか、原判決理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。
1 控訴人は、瀬尾静恵が被控訴人との間で本件和解成立前から係争中で、本件土地部分につき賃借権を主張するおそれがあつたので、和解にもとづく売買代金支払を拒絶したのであつて、控訴人に右代金支払遅滞の責はない旨主張するが、成立に争いのない乙第一、第九、第一四、第一九号証、甲第六号証、原審証人山下清、同本長谷武志、同加藤文雄の各証言並びに、原審及び当審における被控訴本人尋問の結果を総合すると、なるほど被控訴人と瀬尾静恵との間の訴訟事件は昭和三三年まで係属したが、瀬尾が右訴訟事件において借地権ありと主張した地域は本件宅地部分三三坪六合の外にあり、控訴人は右訴訟事件係属(昭和二五年)の当初に瀬尾の右主張の内容及び瀬尾が真実は賃借権等右主張の地域を占有するなんらの権原をも有しない事情を知つていたこと、控訴人は本件訴訟以前和解にもとづく売買代金を支払わない理由として本件土地部分(三三坪六合)に瀬尾静恵が賃借権を主張するおそれがあることを挙げた事実はないことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。そうだとすると、控訴人の右主張事由は控訴人の代金不払の責を免れしめるものとはなり得ない。以上認定を動かすに足りる新証拠はない。
2 控訴人が本件土地中現に占有している地域は別紙第一図面中A、B、C、D、Aの各点を順次結ぶ線で囲まれる地域であること、同地上の控訴人所有家屋が木造瓦葺二階建店舗一棟建坪一五坪(実測面積一六坪一合外オロシ九坪七合五勺)二階一三坪七合五勺であることは当事者間に争いがない。
二、以上の次第で、右と同旨の原判決は相当であるから、本件控訴は理由がないものとして棄却すべく、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。(なお、控訴人の占有する本件宅地部分及び同地上の控訴人所有家屋が一、の2記載のとおり当審において明確にされたので、原判決主文第一項中、土地、家屋の表示を主文第三項のように更正する。)
別紙第一図面
<省略>
別紙第二図面
<省略>